2026/08/16保険診療と併用した前歯のインプラント治療~53歳男性~
- 症例集
今回は、前歯の歯根が歯ぐきの中に完全に埋没し、保存が難しくなった53歳男性のインプラント症例をご紹介します。
患者様はインプラント治療を受けるにあたり、さまざまな歯科医院について調べておられました。
しかし、インターネットで調べれば調べるほど、
「どこの歯科医院で治療を受ければいいのか」
「本当にインプラントをして大丈夫なのか」
「手術は怖くないのか」
と、不安が大きくなってしまったそうです。
そのような中で当院のホームページをご覧になり、奥様と一緒に来院されました。
初診時には多くの不安をお持ちでしたので、現在の状態、治療方法、治療期間、費用、リスクなどをご説明し、納得いただいたうえで治療を開始しました。
今回は、保存困難な前歯を抜歯すると同時にインプラントを埋入する「抜歯即時インプラント(抜歯即時埋入)」を行いました。
治療期間は約3か月。
また、すべての前歯を自費診療にするのではなく、左上1番・2番には保険診療のCAD/CAM冠を使用することで、全体の治療費を抑える工夫もしています。
初診時|前歯の歯根が歯ぐきの中に完全に埋没していました
初診時の状態です。
前歯の歯根は歯ぐきの中に完全に埋没しており、レントゲン検査などを行った結果、長期的に保存することは難しいと判断しました。
患者様にとって前歯を失うことは、奥歯以上に大きな不安につながります。
「歯がない状態で過ごすことになるのではないか」
「インプラント治療には半年や1年かかるのではないか」
と心配される方も少なくありません。
そこで今回は、できるだけ治療期間を短縮しながら前歯の見た目を回復するため、抜歯即時インプラントをご提案しました。
抜歯したその日にインプラントを埋入
保存困難な歯を慎重に抜歯し、そのままインプラントを埋入しました。
このように、抜歯とインプラント埋入を同日に行う方法を「抜歯即時埋入」といいます。
抜歯即時埋入は、適切な症例を選択することで、
・手術回数を減らせる
・治療期間を短縮できる
・抜歯後の骨や歯ぐきの形態を維持しやすい
といったメリットがあります。
ただし、すべての症例で抜歯即時埋入ができるわけではありません。
残っている骨の量や形、感染の状態、インプラントの初期固定が得られるかなどを確認したうえで適応を判断する必要があります。
▶関連記事
「抜歯即時インプラントとは?メリット・デメリットを専門医が解説」
前歯のインプラントでは「どこに入れるか」が非常に重要です
今回はサージカルガイドを使用せず、フリーハンドでインプラントを埋入しています。
前歯のインプラント治療では、単にインプラントが骨の中に入っていればよいわけではありません。
インプラントの位置や角度、深さが適切でなければ、最終的な被せ物が不自然になったり、歯ぐきが下がったりする原因になります。
そのため、残っている骨だけを見るのではなく、最終的にどの位置に歯が入るのかを考えながらインプラントを埋入することが重要です。
術後のレントゲンでも、適切な位置にインプラントが埋入されていることを確認しました。
手術後も前歯がない状態にはしません
前歯のインプラント治療で患者様が心配されることの一つが、
「手術後、前歯がない状態で過ごさなければならないの?」
ということです。
今回はインプラントの固定状態がやや弱かったので、手術後に仮歯を隣の歯に装着しました。
前歯がない状態で長期間過ごしていただく必要はありません。
術後1週間の診察でも大きな問題はなく、歯ぐきは順調に治癒していました。
約3か月後|インプラント周囲の歯ぐきも安定しました
手術から約3か月後です。
インプラント周囲の歯ぐきも良好に治癒し、最終的な被せ物を製作できる状態になりました。
ここで今回の治療における、もう一つのポイントがあります。
それが、「すべての歯を自費診療にしなかったこと」です。
保険診療も上手に組み合わせて治療費を抑えました
前歯のインプラント治療を希望される患者様の中には、
「周りの歯まで全部セラミックにしないといけないのでは?」
「前歯をきれいに治すと、ものすごく高額になるのでは?」
と心配されている方もいらっしゃいます。
しかし、当院では必ずしもすべての歯を自費診療にする必要はないと考えています。
今回もインプラント部分は自費診療となりますが、左上1番・2番には保険診療のCAD/CAM冠を使用しました。
すべてを自費のセラミックで治療するよりも、治療費を抑えることができます。
もちろん、保険診療のCAD/CAM冠と自費診療のセラミックでは、使用できる材料や色調再現性、耐久性などに違いがあります。
その違いについて説明したうえで、「費用をかける必要性が高い部分には適切な治療を行い、保険診療を利用できる部分には保険を活用する」という治療計画をご提案しました。
インプラント治療というと高額な治療をイメージされるかもしれませんが、患者様のご希望やご予算に合わせて、保険診療を組み合わせられるケースもあります。
約3か月で最終的な前歯を装着
手術から約3か月後、インプラント部分に最終的なクラウンを装着しました。
初診時には歯根が歯ぐきの中に完全に埋没している状態でしたが、抜歯から約3か月で前歯の見た目と機能を回復することができました。
レントゲンでもインプラント周囲に大きな問題は認められません。
前歯のインプラント治療では、単にインプラントが骨と結合するだけではなく、周囲の歯や歯ぐきとできるだけ調和した状態に仕上げることが重要です。
最終補綴装着1か月後も良好に経過しています
最終的なクラウンを装着してから1か月後の状態です。
インプラント周囲の歯ぐきも安定しており、良好に経過しています。
治療前はインプラントに対して非常に不安を感じておられた患者様でしたが、手術が終わった後にはかなり安心されたようでした。
その後は私たちを信頼してくださるようになり、治療も安心して任せていただけるようになりました。
術前・術後の比較
左が初診時、右が治療後です。
初診時には前歯の歯根が歯ぐきの中に埋没していましたが、抜歯即時インプラントを行い、約3か月で最終的なクラウンを装着しました。
治療期間をできるだけ短くすることだけではなく、周囲の歯とのバランスや、治療にかかる費用まで含めて治療計画を立てた症例です。
「調べれば調べるほど不安になった」という患者様
今回、特に印象的だったのが、治療後にいただいたアンケートです。
患者様はインプラント治療を受ける前、いろいろな歯科医院について調べておられました。
しかし、情報を集めるほど不安が大きくなり、ご自身のことを「インプラント迷子」と表現されていました。
「インプラント迷子になっており、調べれば調べるほど不安になり困っておりました。ようやく寺嶋先生にたどりつき、インプラント治療に非常に満足しております。これからは歯のことは全て寺嶋歯科医院様におまかせしようと思えました。」
インプラント治療についてインターネットで調べると、さまざまな治療方法や歯科医院が出てきます。
熱心に調べている方ほど、
「結局どの方法がいいのか分からない」
「どの先生を信じればいいのか分からない」
という状態になることもあります。
今回の患者様も、最初は多くの不安を抱えて奥様と来院されました。
そのような患者様が実際に手術を受け、治療が進むにつれて安心され、最後にこのような言葉を書いてくださったことを、私たちも大変うれしく思います。
当院では、インプラント治療を受けることを前提に説明するのではなく、患者様ご自身の状態を診査したうえで、治療方法・期間・費用・リスクについて説明し、納得していただいてから治療を開始することを大切にしています。
この症例のポイント
・前歯の歯根が歯ぐきの中に完全に埋没し、保存困難な状態
・抜歯と同時にインプラントを埋入する「抜歯即時埋入」を実施
・約3か月で最終的なクラウンを装着
・左上1番・2番には保険診療のCAD/CAM冠を使用
・保険診療と自費診療を組み合わせることで全体の費用を抑制
治療期間
約3か月
※骨の状態、インプラントの初期固定、治癒状態などによって治療期間は異なります。
治療費
インプラント治療:約50万円(税込)
左上1番・2番については、治療費をできるだけ抑えるため、保険診療のCAD/CAM冠を使用しました。
※治療費は症例や使用する材料、追加処置の有無などによって異なります。
リスク・副作用
・手術後に痛み、腫れ、出血、内出血などが生じることがあります。
・インプラントが骨と十分に結合しない場合があります。
・抜歯即時埋入は、残存骨量や感染の状態などによっては適応できない場合があります。
・治癒過程で骨や歯ぐきが退縮することがあります。
・骨の状態によっては骨補填や骨造成などの追加処置が必要になる場合があります。
・仮歯を装着できない場合や、仮歯で強く噛まないよう注意が必要な場合があります。
・治療後もインプラント周囲炎を予防するため、定期的なメインテナンスが必要です。
・保険のCAD/CAM冠は、自費診療のセラミックと比較して色調再現性や耐久性などに違いがあります。
関連記事
▶「抜歯即時インプラントとは?メリット・デメリットを専門医が解説」
▶「前歯のインプラント治療|自然な見た目にするために大切なこと」
▶「骨が少なくてもインプラントはできる?骨造成(GBR)について」