2026/08/23保存困難な前歯を抜歯即時インプラントへ|CTGと根面被覆を同時に行った女性
- 症例集
今回は、過去に歯根端切除術を受けた右上2番が保存困難となり、抜歯即時インプラントを行った60代女性の症例をご紹介します。
患者様は右上2番の歯ぐきにできものが繰り返しできることを気にされていました。
他院では「この歯を残すことは難しい」と診断され、インプラント治療を検討。当院のホームページをご覧になり、前歯のインプラント治療を希望して来院されました。
また、右上3番(犬歯)の**歯ぐきが下がり、歯根が露出していること(歯肉退縮)も気にされており、「インプラント治療と一緒に、隣の下がった歯ぐきも治したい」というご希望がありました。
そこで今回は、右上2番に対する抜歯即時インプラント+即時修復と同時に、CTG(結合組織移植)を行い、右上3番の根面被覆も行う治療計画としました。
初診時|過去に歯根端切除術を受けた前歯にサイナストラクトを認めました
![]()
初診時の状態です。
右上2番は、過去に歯根端切除術を受けていました。しかし、その後も感染が残存し、歯ぐきには膿の出口となるサイナストラクトが認められました。
CTやレントゲンで状態を確認した結果、残念ながら長期的な保存は困難と判断しました。
前歯を抜歯した後は、骨や歯ぐきが痩せることで見た目が変化することがあります。
そのため今回は、抜歯後に時間を置いてインプラントを入れるのではなく、抜歯と同時にインプラントを埋入する「抜歯即時埋入」を選択しました。
▶関連記事
「抜歯即時インプラントとは?メリット・デメリットを専門医が解説」
抜歯と同時にインプラントを埋入
保存困難となった右上2番を慎重に抜歯し、そのままインプラントを埋入しました。
抜歯即時埋入には、適応を正しく判断することで、
・手術回数を減らせる
・治療期間を短縮できる
・抜歯後の骨や歯ぐきの形態を維持しやすい
といったメリットがあります。
今回はサージカルガイドを用いて、最終的な歯の位置を考慮しながらインプラントを埋入しました。
前歯のインプラントでは、単に骨のある場所へインプラントを入れるのではなく、最終的な歯の位置から逆算して埋入位置・角度・深さを決定することが重要です。
インプラントと同時に「下がった歯ぐき」も治療
今回の患者様には、もう一つご希望がありました。
隣の右上3番の歯ぐきが下がり、歯根が露出していることを気にされていました。
歯ぐきが下がった状態を歯肉退縮といいます。
そこでインプラント手術と同時に、右上3番の歯肉退縮に対する根面被覆術も行うことにしました。
CTG(結合組織移植)で歯ぐきのボリュームを補いました
![]()
今回は両側の口蓋からCTG(結合組織)を採取し、インプラント周囲に移植しました。
CTGによって歯ぐきの厚みを補うことで、前歯部の軟組織形態を整え、将来的な歯肉退縮のリスクをできるだけ抑えることを目的としています。
さらに今回は、このCTGを利用して、患者様が気にされていた右上3番の歯肉退縮に対する根面被覆術も同時に行いました。
つまり、一度の手術で、
「保存できない右上2番のインプラント治療」
と
「右上3番の下がった歯ぐきの改善」
の両方に対応しています。
▶関連記事
「CTG(結合組織移植)とは?前歯インプラントで歯ぐきを整える治療」
この症例で特に難しかった点|隣のセラミックをやり替えずに歯ぐきを維持する
今回の症例には、もう一つ大きなポイントがありました。
隣接する前歯には過去に治療したセラミックの被せ物が入っており、患者様からは、「できれば今入っているセラミックはやり替えたくない」というご希望がありました。
前歯のインプラント治療では、抜歯や手術によって歯と歯の間の歯ぐき(歯間乳頭)が下がってしまうと、歯の間に黒い隙間が生じ、見た目に大きく影響することがあります。
周囲のセラミックもすべてやり替えるのであれば、歯の形を変更することである程度調整できる場合があります。
しかし今回は、既存のセラミックをそのまま残すことが前提でした。
そのため、現在ある歯間乳頭をできるだけ下げずに、インプラント治療を完了させる必要がありました。
インプラントの埋入位置だけでなく、抜歯時に周囲組織へのダメージをできるだけ抑え、CTGによって歯ぐきのボリュームを補うなど、周囲の歯ぐきの形態を維持することを重視して治療しています。
前歯のインプラントでは、「インプラントが骨に入った」というだけでは十分ではありません。
隣の歯、既存の被せ物、歯ぐきの高さや厚みまで含めて治療を考えることが、自然な仕上がりを目指すうえで重要です。
手術当日に仮歯を装着しました
前歯のインプラント治療では、「手術をしたら前歯がない状態で過ごすの?」と心配される患者様も多くいらっしゃいます。
今回はインプラントの初期固定が良好であったため、即時修復を行い、手術当日に仮歯を装着しました。
そのため、前歯がない状態で治癒期間を過ごす必要はありませんでした。
ただし、抜歯即時埋入を行えば必ず即時修復ができるわけではありません。骨の状態やインプラントの初期固定などを確認したうえで判断します。
術後1週間から約1か月|移植した歯ぐきも順調に治癒
手術から7日後と35日後の状態です。
CTGを行った部分は順調に治癒し、歯ぐきの状態も徐々に安定してきました。
右上3番についても、術前に露出していた歯根が歯ぐきで覆われ、患者様が希望されていた根面被覆が得られています。
インプラント治療と歯肉退縮の治療を別々に行う方法もありますが、今回は治療計画を工夫することで一度の手術で両方の問題に対応しました。
約3か月で最終的な歯を装着
![]()
手術から約3か月後、インプラント周囲の骨と歯ぐきの状態を確認し、最終的な被せ物を装着しました。
右上2番にはインプラントクラウンが入り、周囲の歯とのバランスを考慮して仕上げています。
また、患者様が希望されていた右上3番の歯肉退縮についても改善しました。
そして今回重視していた、隣接する既存のセラミックをやり替えず、歯と歯の間の歯ぐきの形態をできるだけ維持することも達成できました。
インプラントだけを見るのではなく、その周囲の歯や歯ぐきまで含めて治療したことが、この症例の大きなポイントです。
6か月後も歯ぐきとインプラントは安定
治療から6か月後の状態です。
インプラント周囲の歯ぐきは安定しており、CTでもインプラント周囲の骨の状態を確認しています。
前歯のインプラントでは、治療直後の見た目だけではなく、その後も歯ぐきが安定していることが重要です。
そのため、治療終了後も定期的なメインテナンスを継続していきます。
術前・術後|前歯のインプラントと根面被覆を同時に
術前と術後を比較します。
右上2番は過去に歯根端切除術を受けていましたが、サイナストラクトを認め、保存困難な状態でした。
そこで、抜歯即時インプラント、即時修復、CTGを行いました。
さらに、患者様が気にされていた右上3番の歯肉退縮に対する根面被覆術も同時に行っています。
既存のセラミックはそのまま残し、周囲の歯ぐきとの調和を図りながら、約3か月で一連の治療を終了しました。
患者様にも治療結果に満足していただきました
治療後、患者様からは「今回前歯のインプラントと歯茎を増やす処置をして頂きました。大変満足する仕上がりとなりました。説明も丁寧にして頂き、安心して治療を受ける事ができました。」とのコメントもいただきました。
前歯のインプラントは、噛めるようにすることはもちろんですが、歯の形だけでなく、その周囲の歯ぐきまで含めて考えることが重要です。
今回は、インプラント治療とCTGによる軟組織の改善、右上3番の根面被覆を同時に行い、約3か月で治療を終了することができました。
治療期間
約3か月
※骨や歯ぐきの状態、インプラントの初期固定、治癒状態によって治療期間は異なります。
治療費
総治療費:約78万円(税込)
インプラント治療、抜歯即時埋入、即時修復、CTG(結合組織移植)、右上3番の根面被覆術、最終補綴などを含む総治療費です。
※治療費は治療部位や骨・歯ぐきの状態、必要となる処置などによって異なります。
リスク・副作用
疼痛、腫脹、出血、内出血、感染、インプラント脱落、骨吸収、歯肉退縮、知覚過敏、移植組織の壊死、根面被覆量の不足、インプラント周囲炎
関連記事
▶「前歯のインプラント治療|自然な見た目にするために大切なこと」
▶「CTG(結合組織移植)とは?前歯インプラントで歯ぐきを整える治療」