2023/12/18ノンクラスプデンチャーとは?~ノンクラスプデンチャーの光と影~
- 症例集
大阪府箕面市の寺嶋歯科医院です。
今日はインプラントの症例ではなく、珍しく義歯の症例を紹介いたします。
大袈裟なタイトルを付けましたが、誤解されている患者様が大勢いらっしゃるので、意を決して筆をとりました。
一般的には、ノンクラスプデンチャーとか、金属のバネをつかない入れ歯、見た目が美しい入れ歯などと表現されています。
クラスプとは部分入れ歯を固定するための、針金のこと。
このように金属の針金ではなく、ピンクの樹脂で歯を取り囲み固定する手法です。見た目が良いですね。
普通の入れ歯は上の写真(日本歯科医師会HPより引用)のように、金属の針金を使って歯に固定するので、見た目がとても悪く、大変不評です。
ということで、この症例の詳細を説明します。
光学スキャンで型を取り、3Dプリンターで模型を作り、義歯を製作します。
このような少数歯欠損では、ピンクの粘土のような型取り材料は使用しなくてよい時代に入りました。
上の写真見て、「話し違うやん。金属入ってるやん!」って思われたでしょう。
落ち着いてください。今から解説していきます。
ノンクラスプといっても、見えるところはピンクにしますが、内側にはしっかりとメタルフレームをいれないといけません。
なぜなら、メタルフレームが無ければ、義歯がたわんでしまい、変形し、その結果支えている歯を揺さぶり、歯の移動や支えている骨が吸収します。
また入れ歯が沈み込んだりして、土手の部分の骨も吸収してしまうのです。
そしてその結果適合不良となり、ノンクラスプデンチャーそのものも割れてしまうのです。
まったく良い所がありませんね。
この症例でもしっかりとメタルフレームを使用して、後ろの見えない部分には従来の金属の針金を用いています。
何でもかんでも、審美だけを追求すると、知らず知らずのうちに体を蝕んでしまうのです。
日本補綴歯科学会も、このことをしっかりと注意喚起しています
「いわゆるノンクラスプデンチャーについては外観の回復についての有効性という光の部分と、適応をあやまった場合に生ずる顎堤の異常吸収、支台歯の移 動という重大な障害を惹起するという影の部分がある」
と表明しています。補綴学会の声明はこちら!!
今までにも、「ノンクラスプ義歯なので、金属は一切使用していないと思ってた」と残念がられる方は大勢おられました。
我々はプロですので、未来を見据えた内容を説明する義務があります。
もし、「金属を使っていない入れ歯しか絶対嫌」と言われたら、これらのことをしっかりと説明して納得頂いた上で行っているのも事実です。
内心大変心苦しく思いながら提供しております。
でも、そんなときはやっぱりインプラントにされるのが本当はベストです。
この症例では費用は税込み165,000円でした。
以上、ノンクラスプ義歯のお話でした。
文責 寺嶋宏曜