2022/08/10前歯部のインプラント症例~チタン製とジルコニア製アバットメントの違い~
- 症例集
大阪府箕面市の寺嶋歯科医院の理事長の寺嶋です。
今回は、患者様からたまに質問を受ける、「チタン vs ジルコニア」について症例を通じてお話致します。
前歯を事故で数か月前に失った男性患者様が、インプラント治療を希望して来院されました。
折れた歯根が骨の中に残っていました。
術前のCTでも歯根が折れて残っていることが分かります。
このような時、この歯根を安易に抜いてしまうのは非常に勿体ないことなのです。
歯を抜くと、その周囲の骨は廃用委縮(正確には血流が欠如して)していき、どんどん吸収していきます。
使わないと筋肉が衰えるのと同じイメージです。
歯根の一部を残すルートメンブレンテクニック(ソケットシールドテクニック)という技術を用いることで、将来骨が痩せていくことを防止できるのです。
ルートメンブレンテクニックは、コンセプトも技術もアドバンスな治療となりますが、エビデンス的にも確立された治療です。興味がある方は上記の文献をご覧ください。
歯根を一部残しております。残す歯根の形や位置などを決めるのが結構難しいので、これは豊富な経験が必要です。
ルートメンブレンテクニックとかソケットシールドテクニックとか色々考案者によって名前が違いますが、コンセプトはほとんど同じです。
歯根とインプラントの隙間には、自分自身の骨を移植します。そして縫合。
この症例では、全部で60分ぐらいかかりました。
3か月後の状態。男性で咬合力が強いため、チタン製のアバットメントを選びましたが、やはりメタルのため歯肉が黒くなり審美的ではない・・・・
アバットメントとは、埋め込んだインプラントに結合させる土台の部分のことの呼び名です。
やはり前歯部で、チタンアバットメントは厳しい。ということでジルコニアアバットメントに変更することに。
ジルコニアアバットメントのデメリットは、費用がチタンよりも高く、チタンよりも強度が劣ることですが、前歯部ではやはりジルコニアがファーストチョイスですね。
患者様の中でも、「ジルコニアよりもチタンの方が強いので、チタンを使って欲しい」と仰られる方がおられますが、この写真でご理解頂けるのではないでしょうか??
最終のクラウンを入れた状態。注目して欲しいのはレントゲン上でのインプラント周囲の骨の安定性です。
見る人が見ればわかる、骨の安定性。
術前術後の比較写真です。
この症例の治療期間は3か月半でした。
ルートメンブレンテクニックを用いることで、骨吸収を起こすことなく、審美性を維持できます!
そして、チタンとジルコニアの違いもお分かり頂けたのではないでしょうか?
(文責 寺嶋宏曜)