2024/05/11前歯のインプラント~リグロスを使った少しイレギュラーな方法~
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大阪府箕面市の寺嶋歯科医院の理事長の寺嶋です。
今回も前歯のインプラント症例を紹介致します。
まずは↑の写真のビフォーアフターをどうぞ。
黄色の矢印のところが腫れてきて、歯がぐらついていることが主訴で来院されました。昔から通って頂いている患者様です。
では概要をご説明致します。
ポケットが深くなっており、CT所見より歯根破折と診断しました。
残念ながら歯根破折を起こすと保存がほぼ不可能です。ご本人がインプラント治療を希望されたため、行っていくことになりました。
歯を抜いてその日のうちにインプラント&仮歯を装着する治療法です。
患者様は、「前歯は美しく入って当たり前」と思われていますが、実際は一番難しいのです。
いつものように、サージカルガイドと仮歯を用意しておき、オペに臨みます。治療のプロトコールは私の中で十分に確立されたオペですので、どうぞご安心下さい。
こういう歯を抜いたら、歯肉は一気に吸収し、陥没してしまい、後でインプラントを埋めることが余計難しくなります。
そこで、歯を抜いた日にインプラントを埋め込む「抜歯即時埋入」が必須の症例と言えます。
差し歯はすぐに外れて、ポケットを測定すると6㎜、やはり歯根破折です。まずは歯を抜歯して徹底的に感染源を掻破します。
そしてサージカルガイドを用いて、インプラントを埋めこみます。
さらに骨補填材を移植しました。さらに感染で弱ってしまった歯肉を治すために歯肉移植を行いました。経験上、このような症例では歯肉移植も必須と思っております。
歯肉移植って聞いたらめちゃくちゃ怖いかもしれませんが、そこまで大変な手術ではありません。
上顎の親知らずがあったところから採取するだけです。採る時間も5分程度です。この部分は取れる歯肉の量が少ないのですが、本症例のようにリグロスを使用する場合はこれで十分です。
この部位はすぐに治る部分でもあるため、痛みもほぼ出ません。
歯肉を移植し、仮歯を入れてオペ終了。歯が当たらないように少し歯を短くしております。
今回のポイントはリグロスの使用かもしれません。歯肉の増殖を助けるために投与しています。
オペ時間75分(麻酔、抜歯、インプラント埋入、歯肉移植、仮歯装着まで全ての過程を含む)
非常に喜んで頂けるオペです。
↑7日後の状態。大変美しい状態。腫れも痛みもほとんどなかったとのことです。
術前の感染して腫れていた部分も消えています。
3か月後の治療終了時。腫れていた部分も治り、左右対称に治りました。めちゃくちゃ綺麗です。
ジルコニアアバットメントを装着し、セメント固定を行っております。ファーストチョイスはスクリュー固定ですが、症例によっては、このようにセメント固定を行っております。
前歯の色合わせが難しいため、何度か色の修正をさせて頂きました。
ご本人は「これで良いのでは?」って仰られても、私と技工士が納得できなかったため、何度も通って頂きました。繰り返し足を運んで頂けたこと感謝申し上げます。
みよ!この美しい歯肉を!治療前よりも美しく仕上がっております。
右上2番の変色が気になりますが、ご本人は気にならないとのことなので治療は行っておりません。
レントゲンとの重ね合わせ
天然歯のときよりも、インプラントの方が美しくなっております。特に歯間乳頭が良い感じですね。
アンケートでは過分なご評価を頂きました。歯科医師をやっていてよかったと思える瞬間です。
治療期間 4か月
治療費 約55万円(税込 オペ、移植、上部構造など全ての費用が含まれております)
リスク 術後の歯肉退縮
前歯のインプラントは、あらゆる技術を結集させる必要があります。
特に抜歯即時埋入が必須と言えます。
とにかく、今ある歯を抜く前にご相談頂けると幸いです。
文責 寺嶋宏曜