2024/08/26前歯のインプラント治療 けっこう難症例~歯科医師向け解説あり~
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大阪府箕面市の寺嶋歯科医院の理事長の寺嶋です。
今回も前歯のインプラント症例を紹介致します。
あくまでも1本の治療例を提示しているだけです。患者様個々によって治療結果は異なることをご了承ください。
まずは↑の写真のビフォーアフターをどうぞ。
40代女性です。前歯のインプラント治療は、この世代の患者様の一番多いような気がしています。
黄色の矢印のところが腫れてきて、当院のHPを見てインプラント治療を希望して来院されました。歯が折れていることは前医で説明を受けていらっしゃいました。
では概要をご説明致します。
この症例はめちゃくちゃ難症例です。おそらくどんな専門医でも躊躇する症例ではないでしょうか?
難しいポイント:
①ハイリップ(笑った時に歯茎が見えやすい)⇒歯肉のライン 歯のサイズなど審美的に求められることが多い
②歯根嚢胞のサイズが大きい ⇒ 初期固定を得にくい
③隣にインプラントが入っているため、血流が悪い、インプラント間の歯間乳頭の保存が難しい
インプラントは8年ぐらい前に東京のクリニックで治療を受けたそうです。おそらく抜歯即時埋入だと思いますが、素晴らしい治療結果ですよね。
こちらに引っ越してきたため、縁あって私が担当させていただくため、今度は私が結果を出す番です。
まずはデジタル診断を行います。既存骨が根尖部にしかないため、初期固定を得ることができるのか?
いつものように、サージカルガイドと仮歯を用意しておき、オペに臨みます。
オペ数日前、根尖部が結構腫れています。
まずは歯を抜歯して徹底的に感染源を掻破します。
抜歯した後、サージカルガイドを用いて、インプラントを埋めこみます。
今回の症例は、残念ながら即時荷重できるほどの初期固定が得られませんでした。(5N程度)さすがに仮歯を入れるのはリスクあります。
従って、2回法となりました。
ここで新たな技術が登場!! インプラント周囲に骨補填材を移植したあと、ソケットシールを行いました。(Socket seal)
簡単にいうと、結合組織移植術(Connective Tissue Graft)を行い、骨補填材が漏れないように封鎖して、歯肉退縮と骨吸収の抑制を目指すテクニックです。
文献的には遊離歯肉移植術(FGG)で行うことが多いのですが、今回はCTGと一部コラーゲンスポンジで行っています。
そして、最後に隣の歯に仮歯を接着材で張り付けて終了。両隣ともセラミックの歯なので、削るわけにもいかず、接着剤もとても外れやすいことが悩ましい。
オベイドポンティックにして軽く歯肉をプッシュして閉鎖しています。
1週間後の状態。大変良い状態です。
ここから後3週間、何とか我慢して頂きます。(やっぱり2回程仮歯が外れてしまいました。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした)
オペ後38日後に2次外科手術を行いました。埋め込んでいるインプラントに仮歯を装着する治療です。
2次外科手術から61日後にジルコニアアバットメントとジルコニアクラウンを装着して終了しました。
抜歯から3.5か月で終了です。この難症例にしてはとても短い期間でフィニッシュできたと自負しています。
良い感じですね。めちゃくちゃ綺麗な歯肉です。
隣のインプラントやセラミックの歯の歯肉が下がっていません。
骨補填材の入れ方や歯肉移植の部位など、結構考えること多いのです。当たり前ですが、全て計算して手術をしています。これこそ経験。教科書には載っていません。
ビフォアーアフターです。
非常に満足して頂けました。
治療期間 3.5か月(抜歯から最終上部構造装着まで)
治療費 約55万円(税込 オペ、移植、上部構造など全ての費用が含まれております)
リスク 手術が必要 歯肉退縮
前歯のインプラントは、あらゆる技術を結集させる必要があります。
特に抜歯即時埋入が必須と言えます。
抜いてから来られる方多いのですが、とにかく、今ある歯を抜く前にご相談頂けると幸いです。
治療結果には個人差があることをご了承ください。
治療結果への過度は期待はお控え下さいますように、よろしくお願いいたします。
文責 寺嶋宏曜