2024/09/19歯肉退縮への根面被覆術~ブラックトライアングルも少し改善したケース~
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大阪府箕面市の寺嶋歯科医院の理事長 寺嶋宏曜です。
今回は、下顎前歯部の歯肉退縮への根面被覆術、結合組織移植術を紹介します。
Connective Tissue Graft(通称 CTG)を紹介致します。
治療結果は、全ての患者様で異なり、個人差が大きいことをご了承ください。
治療結果への過度な期待はお控え頂けると幸いです。
まずはビフォーアフターをご覧ください。パット見ても歯肉が増えていることが分かりますね。
この患者様は、20代女性。骨格的3級患者様で、矯正希望があってカウンセリングに行かれた矯正医から歯肉退縮がもっと悪化するからハイリスクであると説明を受けられたそうです。
そのことより、当院のHPをご覧頂き、矯正前にまずは歯肉退縮への治療をご希望されて、遠方よりいらっしゃいました。
ではオペについて解説していきます。
上の写真のように、歯肉を受け入れるスペースを作り、口蓋からの歯肉を中に移植します。
今回用いた術式は後から詳細を述べますが、いわゆるトンネルテクニックです。
今回のオペは自分でいうのも何ですが、とてもスムーズに終わりました。
オペ室入室から退室までで、たった60分!!したがってオペにかかっている時間は正味45分ぐらいです。
患者様からすると45分のオペって長く感じられるかもしれませんが、このオペで45分はかなり早い方だと思います。
今回のオペでは、歯周組織再生療法の時に使用するリグロス®を用いています。
成分が「線維芽細胞増殖因子」なので、このような歯肉移植にはとても効果が出やすい薬剤です。
塗布する場所や量がポイントです。(寺嶋ペリオ塾で受講生にはレクチャーしています)寺嶋ペリオ塾のブログはこちら!
移植された歯肉が綺麗に生着し、1週間後には馴染んできていることがわかります。
このテクニックは、おそらくCoronally Advanced tunnel technique(無理やり訳すと、歯冠側牽引トンネルテクニックかな)と呼ばれるもので、ダウンタイムが非常に短く、治癒が早いのが特徴です。
術式って、執刀医が患者様の個々の状態に合わせて臨機応変に変更するので、今回も、論文的なCoronally Advanced tunnel techniqueを自分なりに改変しております。
さて、よく質問される、「採取した上顎口蓋」はどのように治るのでしょうか?
採取した口蓋にもリグロスを塗布しています。このことが良いかの統計学的な根拠はありませんが、経験上早く治る気がしています。
このような感じで、だいたい2-3週間で日常生活に戻れます。
2週間後から6週間後の変化です。素晴らしい結果がでました。
歯肉退縮に対して、結合組織を移植して、根面を被覆する⇒根面被覆術 をご紹介致しました。
歯肉を増やして、防御力を高める。これはとても大切なことですね。
結果が出て、執刀医として大変嬉しく思ってます。
別の角度からどうぞ!この術式はオペ部位のダウンタイムが短いので、大変喜んで頂けます。もちろん口蓋は多少痛みはあるのですが・・・
<根面被覆術のメリット>
・長い歯が短くなり、見た目がよくなる
・歯磨きがしやすくなる
・歯肉退縮が改善する
・歯肉が分厚くなり、歯肉退縮しにくくなる
<根面被覆術のデメリット>
・技術が難しい(術者選びが大切)
・症例によっては、成功しないことがある、むしろ歯肉が下がってしまう場合がある(厚みは必ず増える)
・上顎口蓋のダウンタイムが2週間と長い
・稀に口蓋から術後出血する場合がある。
文責:寺嶋宏曜