2024/11/13前歯のインプラント症例を通して、Dr寺嶋の価値観を語るエッセイです
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大阪府箕面市の寺嶋歯科医院の理事長の寺嶋です。
今回も前歯のインプラント症例を紹介致します。
当院の年間350本の症例のうちのあくまでも一つの治療例を提示しているだけです。患者様個々によって治療結果は異なることをご了承ください。
今回は悩ましい症例を提示します。
まずは↑の写真のビフォーアフターをどうぞ。
70代歳女性です。
前歯の差し歯が何度も外れるということで来院されました。なぜ何度も外れるのか?⇒奥歯に歯が無く、前歯だけで噛んでいるからです。
隣の歯もぐらついています。
このような症例は、もちろん奥歯を先に入れてかみ合わせを作り上げて、それから前歯です。しかし、この患者様は奥歯に歯を入れたくはなく、他の歯の治療も希望されないという独自の価値観をお持ちの方でした。
かなり説明をして、奥歯の必要性や他の歯の治療の必要性も理解はできるけど、希望されない。
なんとか前歯だけインプラント治療してもらえないか?と、強い訴えがありました。さらに喫煙もしています。
以前の私であれば、そんな無茶なリクエストは一切お断りしていたのですが、歯科医師を20年やってきて、色々な方と接してきた経験から、最近は考え方が変わってきました。
みなさんそれぞれの価値観があり、人生があり、人生の中心も様々、人生の終り方への希望も様々。
この方においても、他の歯を治す希望はない、前歯だけ外れない歯にしてほしいという希望。
リスクを知った上で本人がそれを願っているのであれば、医学的には微妙な方法でも、寄り添って希望を叶えてあげるのが専門医の役割かもしれないと思うのです。(賛否両論あるでしょう。正解はない。)
私が断ったら、結局他の先生のところで同じ訴えをして、結局断られるでしょう。誰かが対応しなければならない。このような状態になったのは自分のせいであることを謙虚にご理解されていらっしゃり、費用やリスクなどを理解して、やや無茶な治療であることを理解して下さっているのであれば、やって差し上げるのもよいかと最近は思っています。
所詮、インプラントは欠損を補うだけの治療で、身体的なリスクは少ないですしね。これが全身への影響が大きい咬合治療などであればリスク高すぎて当院でもお断りしております。
ということで、本人の希望どおりインプラント治療することに。
極力金額を抑えるため、サージカルガイドもなし。私の経験と技術のみで対応させて頂きました。
一部の歯根は健全だったため、ルートメンブレンテクニックを行いました。(さらっとアドバンステクニックを使っております)
仮歯を装着して終了。トータル60分。歯が無いことが絶対嫌という希望を叶えるのはこれしかありません。
本人の負担もほとんどなく、ぐらぐらして外れそうだった歯から、ビクともしない歯に変わって非常に喜んで頂けました。
3か月後に最終のクラウンを装着して終了。
インプラントは長持ちするでしょうが、他の歯がこれからどんどん悪くなっていくことが目に見えています。
しかし、今回の治療を通して、歯科治療に対する信頼ができ、他の部分も任せようという気持ちになって頂けるかもしれません。
他の部位の治療を希望されることがあれば、全力で対応して参ります。
術後の患者様の喜びを見て、医学的見地も大切だが、その人そのものを捉えて対応していく必要があると実感します。
でも、若手歯科医師はこういうのはお断りされる方が良いでしょう。
なぜなら、将来悪くなってきたときに、患者由来(喫煙やオーバーロード)のものなのか、インプラントのポジションや上部構造のデザインなどのこちら側の技術の問題なのか?が判断できないからです。
500症例、1000症例と経験を積んでから、他の先生が絶対に断るインプラント治療に手をつけていってください。(それも歯科医師の考えによりますね、手をつけなくてもよいかな。)
ちなみに当院の他の先生にはこういう治療は行ってもらっていません。看板を背負っている理事長だからできる内容なのかもしれません。
<まとめ>
治療期間 3か月(抜歯から最終上部構造装着まで)
治療費 45万円(税込 術前診断、オペ、当日仮歯、最終上部構造などインプラントにかかる費用の全てが含まれております)
私の経験上、歯がある状態からスタートすると、ほとんどの場合この症例のように1回のオペで短期間で終われます!!
抜いてから来られる方多いのですが、とにかく、今ある歯を抜く前にご相談頂けると幸いです。
治療結果には個人差があることをご了承ください。
治療結果への過度は期待はお控え下さいますように、よろしくお願いいたします。
文責 寺嶋宏曜