2025/06/30ブラックトライアングルも改善 NIPSAによる審美的歯周再生治療の実例
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NIPSAを用いた歯周組織再生治療のご紹介
― 歯ぐきをなるべく傷つけずに、見た目と健康を両立する新しい選択肢 ―
前歯など見た目が気になる場所の歯ぐきが下がってきたり、歯と歯の間にすき間(いわゆるブラックトライアングル)ができると、不安に感じる方も多いかと思います。
今回ご紹介するのは、右上の犬歯(#13)に深い歯周ポケット(10mm)と、垂直性の骨の吸収が見られた53歳男性の症例です。
【術前の状態】
術前:右上犬歯部の歯ぐきが下がり、歯間にすき間(ブラックトライアングル)が見られます。
術前のレントゲン:
犬歯部に明らかな垂直性骨欠損を認めます。
【歯間乳頭を守る治療法】
この患者様には、NIPSA(Non-Incised Papillae Surgical Approach)という、歯間乳頭(歯と歯の間の歯ぐき)を切らずに行う再生手術を適用しました。
歯ぐきへのダメージを最小限に抑えながら、再生因子「リグロス」+骨補填材を用い、失われた歯周組織の再生を図ります。
当院では、マイクロスコープ(顕微鏡)を使用し、より精密かつ低侵襲な手術を行っています。
術後1週間:縫合部も安定し、壊死などもなく良好な治癒経過です。
【治療経過(15か月後)】
- 歯周ポケットは 10mm → 4mm へ大きく改善
- レントゲンにて骨の再生像を確認
- 歯間乳頭が回復し、ブラックトライアングルが軽減
- 審美性・歯ぐきの厚みともに自然な形に回復
Dr.寺嶋から
今回の症例は、見た目だけでなく、歯を支える骨の大きな欠損という難症例でした。
従来の術式では歯ぐきを大きく切開する必要がありましたが、NIPSAという新しいアプローチによって、歯間乳頭を温存しながら再生治療を行うことができました。
「この歯を残したい」「自然な見た目に戻したい」という患者さんの想いに応えられたことは、私にとっても非常に印象深い症例となりました。
今後も、精密で低侵襲な歯周治療を通じて、安心と結果の両立を目指してまいります。
【治療にともなうリスクと限界】
- 喫煙や糖尿病などの全身状態により、治癒が妨げられることがあります。
- 術後に一時的な腫れ・出血・違和感を伴うことがあります。
- 骨や歯ぐきの再生には限界があり、完全に元に戻るわけではありません。
- 術後のメインテナンスを怠ると、再発の可能性があります。
治療前に、個別の状態や治療方針についてしっかりとご説明いたします。
【専門性を活かした安心の治療体制】
当院は、日本歯周病学会認定の歯周病専門医として、科学的根拠に基づいた再生治療を提供しています。
また、全国の歯科医師向けの勉強会「寺嶋ペリオ塾」では、今回の症例のオペ動画もご紹介しています。
―― 寺嶋歯科医院 院長
歯周病専門医 寺嶋宏曜