2023/07/17ジルコニアブリッジ症例~歯肉移植術併用、オベイドポンティック症例~
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大阪府箕面市の寺嶋歯科医院の理事長の寺嶋です。
今回も当院が得意としている前歯の審美歯科治療症例を紹介致します。
さて早速ですが、↓の写真で、どの歯が実際に欠損しているでしょうか?
答え合わせを含めて、一連の流れを解説致します。
前歯が腫れてきたとのことで来院されました。歯根破折と診断しました。
折れたところが化膿して、膿の出口がプツっと腫れています。
このような歯肉の腫れ方は、ほとんどのケースで歯根破折です。たまに「セメント質剥離」という場合もあります。
前歯1本抜歯ケースのファーストチョイスは抜歯即時インプラント埋入です。抜歯即時埋入の症例はこちらから!
こちらの患者様は、両隣の歯がすでにクラウンが入っているということもあり、通常の保険適応のブリッジを希望されました。
そこでまずは抜歯を行うことにしました。(自費のブリッジを希望される方は抜歯する際に骨補填などのリッジプリザベーションを行います)
そして抜歯後3週間後の状態がこちらです。
歯肉が腫れているということは、そこの部分の骨が溶けてしまっていることがほとんどです。
前歯は元々骨が薄いので、破折を起こすと、簡単に骨が吸収します。
その状態で、歯を抜くとこのように、いとも簡単に歯肉が陥没致します。
やはりこういうことを少しでも抑制するため、リッジプリザベーションが推奨されます。
今回は保険のブリッジをご希望であったため、何も行わず、単に抜歯だけを行いました。(保険ではリッジプリザベーションは認められていない)
この歯肉の状態でブリッジを入れると、その部分だけ歯が長くなってしまうことをご説明したところ、自費治療になりますが、「歯肉の移植」と「オベイドポンティック形態を付与したジルコニアブリッジ」を希望されました。
ということで、予定を変更してまずは歯肉移植を行いました。
上顎口蓋から歯肉を採取して、凹んだ部分に移植します。(結合組織移植術)
一番右端は、オペ終了した直後の写真です。出血もほとんどありません。(歯肉を採取した口蓋だけが少し痛みます)
所要時間は、
①麻酔など 10分
②歯肉移植と口蓋の保護 50分
③仮歯調整と術後説明 15分
ということで、合計75分程度でした。
上顎口蓋は部分入れ歯のような「シーネ」と呼ばれる装置を入れて保護しました。
数日間は装着しっぱなし、慣れてきたらご自身で着脱して頂きます。
↑の写真はオペ1週間後。ダウンタイムは2~3週間といったところでしょう。生体の治癒能力にはいつも驚かされます。
オペ後2.5カ月の状態。大変美しい歯肉。歯肉が増大したことがわかります。これによりオベイドポンティックを造ることが可能となります。
オベイドポンティック(Ovate Pontic)とは、簡単にいうと、歯が無い部分の偽物の歯が自然に萌出しているよう見せかけるための手法のことです。
本症例では、モディファイドオベイドポンティック、ハーフオベイドポンティックというべきかもしれません。
(ハーフオベイドポンティックという用語は国際雑誌には登場しない(私が調べた結果ですが)が、そのように表現している歯科医師もおり、そのような独自ネーミングは医療では結構あります)
ジルコニアブリッジを製作。オベイド=卵型のポンティックを作っています。
治療終了時です。
患者様のご要望で、歯の色素沈着などをリアルに再現しました。(人それぞれ好みがありますので、可能な限りご要望にお応え致します、ご要望通りにいかない時もあります( ;∀;))
担当技工士:小出俊介氏(T's Factory)
どの歯が欠損しているのかがわかりにくいと思います。これが歯肉増大術を行うメリットです。
歯肉を増大させることにより、自然感溢れる仕上がりになります。
リアルを追求したブリッジ。
2年経過時の写真。とても安定してご満足頂いておりました。
この症例のまとめ
<費用 (2019年当時)>
・ブリッジ 121000円×3本
・歯肉移植 約10万円
<治療期間>
約4カ月
最後に歯肉移植についてまとめます。
どのようなオペのテクニックでそれらを作るかは、歯科医師の技術に依存しています
ちなみに上記の手法は、私が独自に行っている治療ではなく、海外の専門医では普通に行われている治療です。
マニアな人は↓ はオープンアクセスので全文読めます。
Franz J. Pontic site development for fxed dental prostheses with and without soft tissue grafting: 1‑year results of a cohort study
Clin Oral Investig. 2022; 26(10): 6305-6316.
<メリット>
・歯の長さを揃えることができる
・息漏れなどがしにくい
・生え際が自然にみえる
・歯磨きがしやすい
<デメリット>
・オペが必要(リッジプリザベーションができるならそちらを優先させるべき)
・費用がかかる
・保険のブリッジなど、金属を使用している場合、オベイドポンティックは適応できない(金属を歯肉に押し付けると、いつか炎症を起こして膿んできます)
ジルコニアなど生体親和性が高いものでしかオベイドポンティックはできないのです
文責 寺嶋宏曜